第8章 成長
「いやぁ、織田ちゃんは相変わらずイイ女だねぇ」
「ふふ、五十嵐専務こそ相変わらず口がお上手です事」
(ハァ……早く帰って)
私は今、応接室で取引先の専務である五十嵐という男の相手をしていた。
彼は以前から私の事を気に入っており、「織田がいれば商談も上手くいくから顔を出してくれ」と部長に頼まれたのだ。
肝心の部長は急な電話が入り、席を外しているところだった。
「織田ちゃんは彼氏とかいるの?」
そんな事を言いながら、私の向かい側にいた五十嵐が何故か隣に移動してくる。
そしてその手は、あろう事か私の太腿へ…
「っ…」
「ねぇ…織田ちゃんさえ良かったら、僕の愛人にならない?マンションでも車でも…オジさん何でも買ってあげちゃうよ?」
「………」
2人きりなのを良い事に、厭らしく太腿を撫でながらセクハラ発言をしてくる五十嵐。
(ここはキャバクラじゃないっつーの!)
とはいえ相手は取引先の専務…下手な事は言えない。
「もぅ専務ったら…色んな女の子にそう言ってらっしゃるんでしょう?」
「何言ってんの、織田ちゃんにだけだって!織田ちゃんみたいなイイ女他にいないんだからさ。ね、どう?考えてみてくれない?…オジさん、夜の方もまだまだイケるし」
ぶよぶよとした太い指が太腿からスカートの中へ侵入してくる。
流石にこれ以上は…と思った時、席を外していた部長がちょうど戻ってきた。
(…助かった)
それから私は適当な理由をつけ応接室を出た…
(ああ、気持ち悪かった…)
あのタヌキオヤジ…二度と来ないでほしい。
部長も部長よ、私の事呼びつけておいて自分は席を外すなんて。
さっきベタベタと触られた事を思い出しただけでもゾッとする。
両腕を擦りながら廊下を歩いていると、ちょうど前から半田くんが歩いてきた。
「先輩、お疲れ様です」
はにかみながらそう声を掛けてくる彼。
(…可愛い……)
さっきのタヌキオヤジの後で半田くんを見ると余計に癒される。
私は思わず「ちょっとこっちに来て」と、彼を誰もいない会議室へ連行した。
「せ、先輩…?」
「はぁ…癒されるー」
「……、」
戸惑っている彼をぎゅうっと抱き締める。
当然彼は驚いていて。
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