第22章 痛いほどの愛
太「遅い!早く立て。」
師で或る最年少幹部は冷たい声で云い放った。
意識を保っているだけでやっとな身体を気力で立たせる。
太「君は何時になれば使い物になるんだ。」
私を蔑みながらも攻撃する手は一切緩めない。
『うぐっ……!』
太「本っ当に!君は…っ!どうしようも…ないっ!」
トドメに鳩尾に入れられた蹴りにより、私の意識は其処で途絶えてしまった。
頬に温もりを感じて目を覚ませば、その主が中也さんであったことに気付く。
中「よォ、目ェ覚めたか?」
『はい。手当て……ありがとうございました。』
中「あ?あァ……。」
意識がはっきりした後自分の身体を見ると腕や脚、更にはお腹まで至る所に包帯や湿布が貼られていた。
屹度横に座っている中也さんが倒れているところを偶然見つけ、その上手当てまでしてくれたのだろう。
そうでなければ、彼の人が私を手当てすることは愚か運ぶことすら考えられない。
中「彼奴が憎いか?」
『いえ。』
中「如何考えたって女に此の鍛錬はやり過ぎだろ。」
呆れたように、はぁ。と息を吐き遠くを見る。
『ですが力がついているのは事実ですから。』
中「正直に云うがなァ、手前への扱いは芥川より酷だ。」
『芥川さん……。』
彼は私が拾われる少し前に太宰幹部が拾ってきたらしい。
二人の鍛錬の様子は誰もが目を背けたくなる程酷く、だが最年少幹部に口出しを出来る者はおらずみなが心中で心配していると云う。
他者から聞いたような口調なのはその通りで、実際に彼と対面した事はない。
中「辛くなったら俺に云え。話聞いてやることぐらいは出来る。俺のところに所属変更出来るかは一寸怪しいがな。」
『いえ、お気持ちだけで充分です。』
逃げる訳にはいかない。
どんなに辛い環境でも必ず耐えてみせる。
改めて決心が着いたところで扉が叩かれる。