第1章 貴女は僕の太陽
「ギャアアアァァ!!」
遠くの方から、断末魔のような叫び声と共に、何かが破裂する爆音が聞こえてきた。
この音だけを聞けば、いつも通り先生が敵を一撃で始末されたことなどすぐに分かる。
そして、爆音のこだまが消え切らないうちに、真っ赤なマントを翻しながら飛んできた先生が、軽やかに到着された。
「、ジェノス、怪我はねぇか?」
全くの無傷で帰ってきた先生が、戦闘の直後とは思えないほどの落ち着いた様子で声をかけてきた。
先生は、割と戦闘中もこのスタンスを崩さない。先生が「マジ」の顔になるのはそうそう無いのだ。
「お兄ちゃんっ」
さんを抱きしめていた腕を緩めると、まるで飛ぶようにしてさんは先生のもとへと駆け寄って行った。
離れていった温もりが名残惜しい。
「ジェノス君が守ってくれたから大丈夫だよ!」
幼い子どものように安心しきった表情で言うさんの頭をくしゃくしゃと撫ぜてから、先生が俺の方を向く。
「ありがとな、ジェノス」
ニッ、と笑ったその顔は、どことなくさんの笑顔と重なる。
「いえ、当然の事です!それよりも先生、今度また手合わせを願えませんでしょうか?」
「お?どうした、急に」
「先生の素晴らしい戦いぶりを見て、俺ももっともっと強くなりたいと思ったんです」
「ん~、じゃあ、明日はスーパーの特売があるから、明後日はどうだ?あ、その日はキングが来るんだったっけか?」
「もう、お兄ちゃん!師匠なんだから、ちゃんと修行つけてあげて!」
ね、といった表情で笑いかけてくるさんに、俺もニコリと笑い返した。
俺は貴女よりも何歳も年下の、まだまだガキかもしれませんが、貴女に釣り合う大人の男に必ずなってみせますからね。
もう少しだけ、待っていてください。
~Fin~