第17章 三毛縞 斑 / 逃走中 ★
「あ、あの…三毛縞さん、そろそろ下ろして欲しいんですけど…///」
「それはダメだぞぉ! 聖子さんには無理をさせてしまったからな!! ママがこのまま聖子さんのお家まで負ぶって行くぞぉ☆」
「えぇぇぇぇ…」
あの後、近くに奴らがいないか確認し、聖子さんを負ぶってあの電話ボックスを出た。
もう十分日が暮れて来たので、このまま聖子さんの家まで送ることにしたのだ。
恥ずかしいですよぉ…と言っていた聖子さんだったが。
少しして、ふふっ、と笑いながら控えめにキュッと抱き着いてくれた。
「んん? どうしたんだ聖子さん??」
「何だかちょっと懐かしくなってしまって。去年も、何度かこうやって、負ぶって拉致されたなぁって」
「拉致とは人聞きが悪いなぁ☆」
「完全に拉致ですよ、あれ(笑)」
そうやって、聖子さんは楽しそうに笑う。
負ぶっているため顔は見れないが、何となく想像出来てしまう。
だって、俺は聖子さんの笑った顔が大好きだから。
もし俺が、今の活動をしていなかったら、素直に好きだと伝えられただろうか?
そんな事を考えていたら。
「三毛縞さん、あんまり無茶しちゃダメですからね」
その言葉に、言葉を詰まらせる。
この優しい声色の傍にずっといられたら…
俺はもしかしたらとても我儘なのかもしれない。
「 」
「…え? 三毛縞さん、何か言いました…?」
「……ほぉら、もうすぐ聖子さんの家だぞぉ☆」
「ふぇ? あ、そ、そうですね…」
言いかけた言葉を飲み込んで。
笑顔を作った。
いつか
言える日が来ることを祈りながら。
fin.