第18章 I am a Beta
翌朝目覚めると、ふわりと甘い香りが漂った。
いや、くるみのフェロモンによる甘さではなく。
砂糖のような甘い香りに体を起こす。
『おはよ、爆豪くん』
柔らかく微笑むくるみは、きっちり制服に着替えていて。
その上にエプロンを巻き小さなキッチンに向かっていた。
「…大丈夫なんか?」
『うん、ヒート終わったみたい。
今日から学校行けるよ』
楽しみだなーと微笑むくるみをうしろから抱きしめ、綺麗に結ばれた赤いネクタイをシュルリと解く。
『や…な、なに?』
「脱げ、制服」
『え…だめだよ、遅刻する…』
「しねぇよ、いいから…早よ脱げ」
カシャン…とボウルを混ぜていた泡立て器が床に落ちる。
『あ…ちょっと…せめてベッドで…』
「何期待してんだ、今日は学校休みだから脱げっつってんだ」
爆豪はプチプチとワイシャツのボタンを外しながら飄々とそう言うと、
真っ赤になったくるみの瞳を覗き込むように見つめて
「スケベ」
ニヤリと笑った。
『い!今のは!爆豪くんが悪いよぉ…!』
くるみは真っ赤に染まった顔で、半分泣きながら訴えた。
確信犯だった爆豪はからかうように笑うとクシャッとくるみの髪を撫でる。
「どっか行きてぇか?」
『ううん、爆豪くんとお家にいたい。
薬飲む前でよかった』
常用しているオメガフェロモン抑制剤は、ヒート時の注射ほどの副作用はないにしても、軽度の頭痛などは起きる
だが飲まずに外出ができないくるみからすれば、こういった休みの日は極力家にいたいと思ってしまう。
出来上がったふたりぶんの朝食は、ハチミツのたっぷり使われたフレンチトーストだった。