第2章 全員揃わないのですが。
晴明side
座敷さんにかなり念押しして、ようやく「分かったから」の一言を貰えた。
いやー、学生寮(女子寮)まで押しかけて正解だったみたい。良かったー、と喜んで僕は帰ろうとしたけど、女子寮を出たところで狸塚君が呼び止めた。
「ねえねえ、晴明(せいめい)君」
シャツの裾を引く彼は、まだ帰っちゃダメ!と頬を膨らませていた。あれ?なんか忘れてるかな?
すっかり忘れてる僕に向かってため息をつく、途中合流した泥田君。ひ、ひどいなぁ。
「紅子ちゃんは登校するって言ったけど、九十九はどうすんだよ」
呆れてモノも言えないという顔をして、またため息をつく。
あ!そうだよ、九十九さんだよ!
九十九さんがいないとクラス写真が!
ようやく思い出した僕のお尻を、まるでゴミを見るような目で見ながら蹴る佐野君。
もっと優しくしてよ...。
しょげる僕を無視して、腕の中の狸塚君の頭を撫でると、盛大なため息をつく。
「アイツの方がかなり厄介だろ、事情が事情だしな」
どうやら事情を知っているらしい、狸塚君と泥田君と佐野君。
え、何?ワケありな感じなのかな。他の先生方は教えてくれなかったからなぁ。
なかなか教えてくれない三人は、僕に教えることを躊躇っているようだった。
そ、そんなに深いワケが!?
「じ、事情って...?」
恐る恐る聞いてみると、泥田君は困ったように頬を掻きながら、言いづらそうにボソッと言った。
「あいつ、謹慎食らってんだよ」
「んえ?」
きんしん、謹慎?え?
もしかして、僕の恐怖ヒエラルキー第一位のコンビニでたむろしてる系の不良なのかな!?九十九さんって不良なの!?
冷や汗が止まらない僕を横目に、違うだろと訂正する佐野君。
「正しくは食らったけど、謹慎が解けたにも関わらず登校拒否してんだ」
と、とと登校拒否?!なにがあったの!?
学校に来るのが嫌になっちゃったのかな。そもそもなんで、九十九さんは謹慎なんて食らったんだろう。
「ど、どうして?」
この学校の校則の緩さは知ってるけど、その校則すら破るって。一体何をしたらそうなるんだろう。
不安が滲み出てたのか、泥田君はそんな深刻な理由じゃねーよと笑った。
「入道が言うには、アイツのじーちゃんが骨折したらしくて、その面倒をばーちゃんと一緒に見てんだとよ」