第18章 8月 Ⅴ
明日から新学期が始まる。
まだまだ夏の暑さが残る8月31日。
最後まで残ってしまっていた宿題の作文も何とか仕上がった。
それを見ていたかの様にタイミングよく鳴り出したスマホには「青峰大輝」の文字が浮かぶ。
『もしもし。』
「今日はテツじゃねぇんだな。」
『黒子君に用事?』
「いや、お前に。」
『私?』
「今からヒマか?」
バスケならやらないよ、とアリスは先手を打つ。
実の所、黒子に付き合って山合宿の後から少しずつ自分もボールに触る様になってきている。けれど、それはそこまでの事。
「知ってる。つか、お前じゃ俺の相手になんざならねぇだろ。」
『……切るよ?』
「あー!待て!待てって!」
きっとゴロゴロしながらかけてきていたのだろう。
慌てて体を起こした様な音がして、アリスは笑ってしまう。
『待ってるよ、大丈夫。そんな事しないから。』
「っ、んだよ。笑うな。」
『ゴメン、ゴメン。』
「今からちょっとウチに来いよ。」
『青峰君の家?』
「あぁ、さつきも来てっからさ。」
場所は覚えてるか?と聞かれ『だいたい』と答えた。
よく通る道沿いだった事もあり、間違う事はないはずだ。
「んじゃ待ってる。」
『はい。』
アリスは簡単に身嗜みを整え家を出る。
午後の日差しと焼けたアスファルトからの反射熱で、外に出ただけでじんわりと汗をかいてしまう。
いくら近いとは言っても、その距離ですら歩くことを考えるともう少し日が傾いてから約束すればよかったと後悔した。
思えば登下校やロードワークでいつも通っていた所に青峰の家があったなんて、何だか不思議な気持ちになる。
出会う事が決まっていたかの様。
『わざわざ出迎えに出てくれたんだね、ありがとう。』
次の門を曲がればすぐという所で青峰の姿を見つけ、アリスは急いで駆け寄る。
ちょっと照れた様に「別に」と青峰は一言。
どのぐらい待っていてくれたのか、ジワっと額に汗が浮いているのを見てアリスはふわりと笑顔になる。
「なんだよ。」
『別に。やっぱり青峰君は優しいなと思って。』
そんな事言うのはお前だけだぞ、と大きな手がアリスの頭を撫でる。
きっとそれは青峰の照れ隠しだったのだろう。
さつき達が待ってる、とドアを開けて中に入る様に促される。