第16章 8月 Ⅲ
こんな所に何があるの?と不安そうなアリスを他所に、黄瀬はこっち、こっちとその中へ。
二人で乗っただけで窮屈さを感じる様なエレベーターに乗り、辿り着いたのはビルの屋上だった。
『凄い!!』
目の前に打ち上がる大輪の花。
アリスの顔からは不安の色は無くなって、花火に負けないぐらい輝く。
「去年、ここで花火背景にメンズ浴衣の撮影したんスよ。」
『そうなんだ!凄いね!!』
花火はアメリカにもあるが、こうして見る日本の打ち上げ花火の美しさは比べ物にならない。
体を突き抜ける様な破裂音や振動、バチバチ、パチパチと火薬の爆ぜる音も聞こえる。
『Amazing!』
(凄い!)
途切れる事なく夜空に開く光の花に、アリスは目を離せない。
隣で黄瀬もとても嬉しそうに彼女を見ていた。
「ねぇアリスっち。キスしてもいいっスか?」
激しく打ち上がる花火の音で聞こえない、と黄瀬の声をちゃんと聞こうと耳を近付ける。
『っん?!』
言葉ではなく、唇が重なった。