第16章 8月 Ⅲ
飛び交う英語。
親しげな火神とアリスの父親。
なんであの時帰らなかったのかと青峰は溜息をこぼした。
『Dad,Taiga,speak in Japanese.』
(パパ、タイガ、日本語で話してよ)
青峰君が困ってるじゃない、と夕食を運んで来たアリスは言った。
「いや〜すまん、すまん。向こうが長いとついね。」
笑った顔がアリスのそれにそっくりだ。
アリスの父親、如月=リーンハルト=克哉。
アメリカ人ハーフのせいか、実年齢よりだいぶ若く見える。
久しぶりの日本だが、たまたま仕事で帰国しただけで、明日には向こうに帰ってしまうらしい。
「それにしても大きくなったな!」
「俺、ですか?」
突然自分に話題が振られ、青峰は目を丸くする。
「大輝君だろ?昔、アリスと一緒によくバスケしたじゃないか。」
あのやんちゃ坊主がこんなに大きくなってるなんてな!とまるで息子の成長を喜ぶかの様。
聞けば克哉は、学生時代にバスケをやっていて、アメリカに行く前はよく娘のアリスや近所の子供達相手にバスケを教えてた。
その時にいた子供の中に青峰もいたらしいが、本人はすっかり忘れてしまっていた。
「マジかよ、克哉さんバスケやるのか?」
「遊び程度さ、もう君等には敵わないよ。」
『ねぇ、パパさっきの話。青峰君を知ってるの?』
最後にスイカを切って来たアリスは、どうして?と首を傾げた。
「なんだいアリスまで忘れちゃったのか?大輝君に負けたくないって向こうに行ってもバスケだけはやめなかったのはアリスだろ?」
渡米する前もこの街に住んでいた事も忘れてしまったのか?と克哉に言われたアリスは、少し曇った表情。
必死に昔を思い出そうとしても靄がかかっている。
大好きな母親の死を受け止めきれなかった幼いアリスは、無意識のうちに思い出を隠してしまっているらしい。
『そうだっけ?』
「まぁ小さかったしな。でもちゃんと再会して仲良くしてるならいいじゃないか!」
克哉はこれからもアリスを頼むぞ、ととても楽しそうに言った。
すっかり思い出話やバスケの話で盛り上がってしまい、気が付けば深夜。
克哉は「泊まっていけばいいだろ」とあっさり言った。