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君と僕とが主人公LS

第2章 4月


入学式から数日。
真新しい制服にも慣れ、新しい「高校生」という環境を皆が楽しみ始めた。
中学の頃から同じ部活を続ける人、高校では新しい事にチャレンジする人、友達と友情を深める人、そして特にやりたい事もなくただ流されて過ごす人。
方向性がそれぞれ見え始めたこの時期、すっかり花弁を散らしてしまった桜をボーっと眺める新入生が一人。
如月アリス。彼女は流されて過ごす事を選んだ。
帰国子女で高校入学に合わせ帰国した彼女には同じ中学からの友達が一人もおらず、どこかクラスの中ではぐれてしまっている。


「如月さん、もう部活決めた?」

『…え?』

「アメリカでは何かやってなかったの?」


親切心なのか、それともただの気まぐれなのか。話しかけて来たのはクラスの中でも目立つ女子。


『特には。』

「なら私達と一緒に見学回ろうよ!」


彼女の背後で数人の女子がこちらを見ているのに気が付いた。
ここは嘘でもSMILEを浮かべて頷いておいた方がいい、そう判断したアリスは溢れんばかりの笑顔を浮かべる。


『ありがとう!お邪魔じゃなければ、ぜひ!』

「誠凛(ウチ)って運動部に結構力入れてるみたいだし、男子部のマネージャーもいいよね?」


今、自分は彼女達と同じ様に笑っているだろうかと不安になり、常に客観的に自分を見ているもう一人に確認する。
いつかこんなやり取りを日常的に、当たり前に出来るようになるのだろうか。
楽しそうに話す自分とそうでない自分が一人に戻る日が来るのだろうか。
クラスメイト達と男子の運動部を中心に見学して歩く。
どうしても目が行くのはバスケ。
体育館でシューズが摩擦してキュッキュッと音を立てる。フロアをボールが弾む音。
嫌でも色々な事を思い出してしまう。


「見て!あの人!凄いね、本当に同い年?」


一際目立つ大きな体に赤みがかった髪。
ここまでピリピリする程に伝わってくる緊張感。


『…タイガ!』


大きなボールを空気が震える程の激しいドリブルで運ぶその姿には見覚えがあった。
昔と変わずバスケが大好きな事が伝わってくる。
アリスの呟きの様な声が聞こえたのか、ふと彼の視線がこちらを捉えた。


「あれアリスじゃねーか!お前、バスケはもうやらないんじゃなかったのか?」
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