第61章 新 8月II
相田と日向はデートなんだよ、と小金井はニヤニヤ笑いながら言った。その後ろで水戸部も微笑ましい表情を浮かべていた。
日向が相田に特別な感情を持っているらしい事には、なんとなく気が付いていたがまさか自分がいない間に進展があったのか?とアリスは驚きを隠せない。
「コガ、あまりオーバーに言うなよ。アリスちゃんマジにしてんだろ?」
『え?伊月先輩、どう言う事ですか?』
えっと、と気まずそうにする伊月の後ろで火神と黒子は一年生を相手にしている。
「だから、ほら。日向ってそういう所はダメだろ?」
だからみんなで二人きりにしてやろうって話になってんだよ、と伊月は言った。
どうやらみんなの根回しで今日、二人は練習に来ていないらしい。
『そうだったんですか、上手くいくといいですね!』
本心からそう思っているのだろう、アリスはそう言うとふわりと微笑んだ。
「よし、んじゃ俺達もそろそろ行こうか。」
体育館での練習は一旦中断してクーラーの効いた視聴覚室へ移動する。
使用許可を貰っておいて欲しいと頼まれていたアリスは、てっきり他校のスカウティングでもするのだろうと思っていた。
だからバインダーとペンを持って彼等の後に着いていった。
「本場のストバスチームが見られるなんてワクワクしますね。」
「あぁ!」
大きなテレビ画面に映ったのはアメリカストリートバスケの人気チーム、Jabberwock(ジャバウォック)。
そして彼等の相手をする日本人チームStrky(スターキー)のメンバーは見知った顔ばかり。
『…なに、これ…。』
普段でも大きな彼女の目は、眼球がポロっと零れ落ちそうな程に見開かれている。
「景虎さんが案内役なんてな。」
「あっちに日向とカントクは行ってるんだよ。」
デートと言ったが、このエキシビションマッチのチケットが手に入ったと言う相田と、それに付き添う形で日向が同行してるんだ、とどこか楽しそうに説明してくれた伊月の言葉は全くアリスには届いていない。
全員の興味が試合に向けられており、彼女が震えている事には誰も気が付く事が出来なかった。
試合開始のブザーが鳴るとみんなの顔からどんどん笑顔が消えていった。
最初こそ、圧倒的なジャバウォックのパフォーマンスに目を輝かせていた。