第60章 新 8月
それに優勝したなんて凄いじゃないか!とアリスのテンションが一気に上がる。
『でも、本当に良かったです!今吉さんがまだバスケを続けられて。』
「そりゃ、アリスちゃんのおかげやで!ありがとうな。」
『私は何もしてないですよ。』
「ほなら、明日があるさかい。テレビ越しに応援してぇな。」
『はい!』
頑張って下さいね、とアリスは明るい声で言った。
結局、その後シャワーだけを済ませてアリスは再びベッドに入った。
明日の朝から誠凛高校男子バスケ部は練習がある。
寝坊して遅刻する事にならない様に、しっかりアラームをセットした。
ジリジリと肌を突き刺す様な日差し、ムシムシと纏わりつく様な湿度の高さは日本特有の夏だ。
早朝、太陽が昇り始めるとジリジリ気温が上がっていく。
クーラーのおかげで快適だった室内とは別世界。
「いやぁ、懐かしい暑さだな!」
『パパ、いくら暑いからってそれはダメよ。』
ハーフパンツだけで上半身には何も身につけていない。
そんな格好でテラスに出てタバコを吸っている克哉に、アリスは呆れた様な目を向けた。
「あー!そっか、そうだな。」
日本ではダメだな、と苦笑いを浮かべる克哉に、この先この人はこっちでやっていけるのかと心配になってしまう。
日本で仕事が始まるのは来週かららしいが、それまでに生活のズレを直す事が出来るのか?とアリスは言った。
「大丈夫、大丈夫!こう見えて、パパは凄いんだぞ?」
『…本当に?』
「本当だよ!」
だからお前はなんの心配もせずに思い切りこの夏を楽しめ、そう言った克哉は彼女によく似た笑顔を浮かべた。
『私、今日は部活だからね。』
もしかしたら夕飯も外で済ますかも、とアリスはスポーツバッグに黄瀬に渡すお土産を入れながら言った。
久しぶりに履く自分のバッシュの紐を確認して、タオルやテーピングもしっかり揃っていることを確認する。
「思い切り楽しんでこい!」
『うん!』
克哉に見送られ家を出たアリスは、とても楽しそうで幸せそうな顔をしていた。
「Should she be in Japan, too?」(彼女も日本にいるんだろ?)
「She?」(彼女?)
これから同世代の日本人と試合をする事になっている。