第59章 新 7月 II
確かに何度か青峰から着信があった事には気が付いていた。
しかし、きっと彼は時差を知らないらしく、着信があるのはいつも真夜中や早朝でアリスはすっかり眠っている時間だった。
目が覚めてかけ返すにも、今度は日本が真夜中になってしまう。
しかし、昼間の時間帯を狙っても彼は練習や試合中かもしれないと思うと迂闊にかけられなかった。
「あんまりいじめたんなや。アイツ、あれでかなり繊細なんよ?」
『大丈夫ですよ、明日の飛行機で戻りますから。』
「飛行機?」
『今、ロサンゼルスの実家にいるんです。』
それを聞いた今吉は、アリスが故意的に青峰を無視していたわけではないと察したのだろう。
こりゃアカンわ!アホやな、アイツ!と笑っている。
「ほんま、退屈せぇへんで。」
『それ、青峰君に言ったら本当にヘソ曲げちゃいそうなんで内緒にしといて下さいよ?』
「そやな!ほんま、カワイイやっちゃ!」
一通り笑った今吉は、ほなまたな、と会話を終わらせた。
「やっぱりアリスは日本に帰るべきだね。」
今は亡き、彼女の母親もそうだったが、その血は確実にアリスにも流れているのだろう。
何故か惹かれずにはいられない、彼女のバスケは人を惹きつける不思議な力があるのかもしれない。