第51章 新 5月 II
それにだいぶ疲労が見えているが、アリスも同じく笑っている。
「最後まで使わない気なのか、左手。」
「使えないのかもしれません。」
前半に比べると彼女と青峰の1on1は少なくなっている。
小金井からのパスがアリスに渡ると、すかさず青峰がそこにつく。
この1on1はどちらに軍配が上がるのか、と火神、黒子は二人から目を離せない。
「「!!!」」
次の瞬間、青峰が体勢を崩しペタンと尻餅をついたのだ。
「青峰君がアンクルブレイクされるなんて、驚きです。」
全力で大きく右に切り込むフェイントから自分の左手にパスを出す様な巧みなボールハンドリングを駆使したドライブ。
大きく左右に振られ直後の突進に対応しきれず、青峰の重心が崩れたのだ。
しかし、すぐに体勢を直し彼女の前に立ち塞がる。
『ふーり!』
当然すぐに青峰が追い付いて来るだろう事を予測していたアリスは、降旗へとパスを出した。
降旗の放ったボールはネットを揺らす。
「やった!」
それを見届けたアリスは、もう無理だ、と嬉しそうに笑いながらもコートに座り込んでしまった。
アリスの体力は限界だと代わりに高尾が入った。
しかし、点差は開かれるばかりで結果はBチームの勝利。
「試合には負けたけど、青峰とアリスちゃんの勝負はアリスちゃんの勝ちだな。」
まさか本当に出来るとは思わなかったよ、と小金井は言った。
『青峰君を転ばせてみようかと思います』そうアリスから聞いた時は正直、誰もそんな事出来るわけがないと思っていた。
しかし、彼女は見事にそれをやって見せた。
「あんなのいつ覚えたのさ?」
小金井と降旗に支えられていないとまともに歩けない程に消耗してしまっているアリスは、えへへ、と笑う。
『赤司流アンクルブレイク術なんだよ。』
「えぇ!?赤司ってあの赤司?」
そう、あの赤司とアリスは笑う。
そのままコートの外に出ようとしていた3人の前に大きな影が立ち塞がる。
その主人に小金井と降旗の顔から表情が消えた。
「俺が運んでやる。」
『え?ちょ!やっ!』
アリスの抵抗など関係ないと、ひょいっと荷物でも担ぐかの様に彼女を肩に抱き上げた青峰は、そのまま体育館を出て行ってしまった。