第43章 2月 II
本当ならば学校に行って授業を受けているはずの時間だ、サボってここに来た前科のある火神と青峰は仕方がないにしても、黒子まで一緒なのだ。これはただ事ではない。
『涼太、どう言うつもりなの?』
「アリスを独り占めしたい、それだけだよ。」
真っ直ぐに見下ろしてくる目は、いつもの柔らかなものではなかった。
今の黄瀬は大型犬ではなく、獲物を前にした狼だ。
しかしアリスも譲らない。
『バカ言わないで、離してよ!』
「…好きなんだよ、俺は。」
そう言った黄瀬は、掴んでいた手を思い切り自分の方へ引き寄せた。
体格も違う、身長差も大きい。それに男には力では敵わない。
これが本当に路上で出会った見知らぬ誰かだったら、護身術を使って抜け出す事も可能だった。
『…涼太、離して。お願い。』
静かなアリスの声。
それにハッとした黄瀬は力を抜いた。
「充電完了っス!」
そう言ってパッとアリスから手を離した黄瀬は、普段の人懐っこい笑みを浮かべていた。
だからアリスは今の事をなかったかの様に、玄関へと三人を出迎えに向かった。
その後ろ姿を、黄瀬が寂しそうに見つめていた事には全く気が付いていなかった。