第42章 2月
秀徳高校バスケ部のオフ日、今日は緑間と会う約束をしている。
誠凛高校バスケ部は練習日だったが、アリスは相田に事情を話し休む事を了承して貰った。
アリスの両手の怪我については、病院の医師はもう完治している。だからこれ以上の治療はないと言っている。
実際、日常生活は何も問題なくおくれているが、バスケになるとどうも怪我をする前と同じ様には動かない。
特に左手は自分が思い切り開いているつもりでも、開ききっていない様な違和感があった。
それをどうにか出来ないものかと試行錯誤を繰り返し、リハビリ専門の医師に相談したが改善はなかった。
あとはテーピングでのサポートでどこまで誤魔化せるかじゃないかとアレックスに言われたアリスは、指へのテーピングで真っ先に浮かんだのが緑間だったのだ。
緑間にテーピングの事を教えて欲しいと頼んだアリスは、恐らく高尾も一緒に来るだろうからとお礼のクッキーを二人分焼いた。
待ち合わせ場所に向かう途中、商店街も駅前のデパートも、ヴァレンタインフェアで賑わっていた。
赤やピンクでデコレーションされた特設コーナーは、沢山の女性客で賑わい、甘いチョコの香りがしていた。
日本のそれは女性が男性にチョコレートと一緒に告白をするイベントだが、アメリカではどちらかというと恋人間や夫婦間で愛を祝うイベントだった。
日頃の感謝を込めて家族や友人にプレゼントを贈る事もあったけれど、それは義理チョコとはちょっと違う。
所謂帰国子女のアリスが理解に苦しむ日本の風習の一つがヴァレンタインだ。
「アリスちゃーん!」
他の人達より頭一つ分以上背が高い二人は、人混みの向こう側にいたがすぐに見つける事が出来た。
『やっぱり高尾君も一緒なんだね。』
「真ちゃんだけデートするなんてズルいだろ?」
「デートではないのだよ。」
近くの喫茶店に入った三人は、とりあえず何か食べようとランチの注文をする。
「粉砕骨折って骨がバラバラになったって事だろ?」
『そう。試合中の接触事故でね。』
簡単に言えば踏まれちゃったんだよ、とアリスは辛い思い出だろうに笑って話した。
グーパー、グーパーと動かしている手は特におかしなところがある様には見えないが、彼女自身はどこか不満気な顔。
「ちょっと手を出してみるのだよ。」