第40章 1月 II
特にアリスの様にボールハンドリング技術を駆使するトリッキーなプレイをする選手は、どちらの手でも自在にボールを操る人が多い。
しかし、今の彼女は右手にそれが集中している。
「じゃあやっぱ、使ってねぇんだな。」
それか使えない、か、だ。
暗い表情を浮かべた火神に、アレックスは厳しい一言を口にした。
「一度壊れたら戻らないからな。」
だからスポーツ選手にとっては、些細なものであったとしても故障は命取りになるのだ、と。
翌日の練習後、着替えを済ませて出てくるアリスを火神は待っていた。
「アリス。今週末ちょっと俺んちに来ないか?」
『いいけど、何かあった?』
「アレックスが会いたがってんだ。」
思えば新学期が始まってから顔を合わせていない。
じゃあ土曜の練習後、自宅に帰らずに真っ直ぐ行くよとアリスは言った。
男子部員と同じメニューをこなしながら、一応はマネージャーなんだから、と雑務もこなしてしまう。それで授業もしっかり受けている。
体力についてはバスケを辞めてからもロードワークしたり、筋トレをしたりはしていたおかげで問題なくついていけている。
自分でも驚いたが、ダメだと思っていた利き手もソコソコに動いてくれてた。
『私もアレックスに相談したい事があったんだ。』
その日は美味しい物食べようね、とアリスは微笑んだ。