第32章 WC
『ビックリした?』
「なっ!テメェっ!」
『続きは私を惚れさせたら、ね。』
ちなみに、普通に口説かれても私は靡かないよ、とアリスは悪戯に笑う。
そのまま、ピョンピョンと青峰から距離を取ったアリスはまだクスクスと笑っていた。
「とりあえず、お前とバスケがしてぇな。」
『そうだね!カッコいいとこ、見せつけてよ。』
アリスはそう言うと『楽しみにしてるね』と手を振りながら行ってしまった。
また一人になった青峰は桃井が彼を見つけるまで、そこで寝転がっていた。
ちょっとやり過ぎてしまっまかな、と青峰の所から離れたアリスは小さく溜息を吐いた。
彼が自分に好意を持ってくれている事を知っていたから、それを利用した。
こんな卑怯なやり方は最低だとわかっている。
けれど、こんなやり方しか慰める方法が思いつかなかった。
『最低だね、私は。』
試合が終わって最初に会いたかったのが青峰だった。
自分がそう思った理由はわからない、衝動的に彼に会わなければいけないと思った。
「やっぱり見に来とったんか。」
『今吉さん。』
「なんやアリスちゃん、 勝ったくせして辛気臭い顔しとるなぁ。」
そう言った今吉の目元はほんのり赤い。
彼も泣いたのだとわかる。
『今吉さんの腹黒さって感染したりします?』
はぁ?と表情を引きつらせた後、今吉は盛大に吹き出した。
「例え感染するとしても、や。君には感染らんやろ。」
だから、ウチの最強エースを頼むわ、と今吉はアリスの頭を優しく撫でた。