第29章 12月
嫌われちゃったかな?とアリスはおどけて見せた。
黒子の方が悲しそうな顔をした。
もし、彼女の言う通りならばそうさせてしまった原因は自分にもある。
「あの、僕がこんな事を言うのはおかしいと思いますがもし…。」
そこまで言いかけて黒子は口を閉ざした。自分は今、何を言おうとしたのだろう。
『どうかした?』
「いえ、なんでもないです。」
変な黒子君、とアリスは言った。
これ以上彼女といたらまたおかしな事を言いだしてしまいそうで、黒子は足を止めた。
次の角を曲がれば彼女のアパートまですぐだ。
「すいません、今日はここで失礼します。」
『うん!いつも送ってくれてありがとう!』
アリスは笑って手を振った。
黒子の態度が急に変わった事に気づいていたが、本人が隠そうとしていることもわかってしまった。
だからアリスはそれに気が付かないふりをした。