第25章 10月 Ⅳ
いくらみんなテンションが上がっているといえど、このまま彼女をその場に戻すのは嫌だった。
「なぁアリス。このまま抜けっちまおうか?」
『そうだね、それもいいかも。』
人が集まる方には戻りたくないと言い、部室棟の屋上に逃げるとアリスは言った。
そこからなら、校庭で行われる後夜祭の様子が一望出来る。
「昨日、久々にお前とバスケしてやっぱ好きだなって思った。」
『そうだね、私も楽しかったよ。』
「絶対!またやろうな!」
そうだね、とアリスは素直に頷く。
来月に入ったらすぐにウインターカップの予選が始まる。
その前にもう一度ぐらい、アリスとバスケがしたい。
『ホント、みんなバスケが好きだよね。』
私もだけど、とアリスは呟く。
『今ね、私のバスケはモテ期なんだよ?』
「なんだそれ?」
『青峰君と涼太、それにタイガ。』
みんなまたやりたいって言ってくれた、と嬉しそうに話すアリスにはもう彼女を苦しめていた物がなくなったのだとわかった。
「ならちゃんとバッシュぐらい買えよ?」
『そうだね、買っちゃおうかな。』
どうせやるなら本気のお前とやりたいからな、と火神は言った。
たぶん、それは青峰や黄瀬も同じはず。
「お前、変わったな。」
『そうかな?』
もしそうなら、みんなのおかげだよ、とアリスは言った。
そのみんなの中に自分もはいっているのだろうか。
「アリス。」
『大丈夫、もう泣かないよ。』
激しく燃え上がる炎を見ているアリスの横顔はとても綺麗だった。