第22章 10月
体育祭と文化祭が年度毎に交互に開催される誠凛高校、今年度は初の文化祭が行われる。
各クラスの出し物の他にも部活や同好会もブースを出す。
アリス達のクラスはコスプレカフェを行う事に決まった。
「なんで俺がこんな格好しなきゃならねぇんだよ!」
『似合うよ、それ。』
嫌がっている割にはきっちり衣装を身に付けた火神をアリスはクスクスと笑う。
フサフサの耳とフサフサの尻尾がついたタキシード。
この衣装のコンセプトは狼男らしい。
「いいよな、黒子は裏方で。」
『本当。』
「二人共ステキですよ。」
水色のエプロンドレスに金髪のウィッグを 付けたアリスは不思議の国のアリス。
間も無く外部からの来場者も迎え入れての文化祭が始まる。
火神と黒子はクラスの出し物の他にもバスケ部のブースにも行かなければならない。
楽しむだけの文化祭、というわけにはいかなそうだ。
『バスケ部はどんなブースを出してるの?』
「さぁ?よくわかりませんが儲かる物だとカントクは言ってました。」
『儲かるもの?』
どんな内容なのだろうか。
文化祭は部費を稼ぐ絶好のチャンスだとカントクは偉く気合いが入っていたが、具体的に何をするのかは聞いていないと火神と黒子は言った。
「火神君、如月さん!そんな所でサボってないで!」
クラスメイトに注意され、二人は仕方なく接客に黒子は調理係の方へと向かった。
アリスのクラスも客入りは上々で、入りきれない客が廊下に列になっている程。
格安で購入したドーナツやクッキーと市販のジュースを提供するだけのカフェだが、コスプレの完成度が高いと評判になっているらしい。
『おまたせ致しました。』
コーラとドーナツを乗せたトレイを運んだアリスは、笑顔と一緒にそれを置いてくる。一方で火神は愛想はないがそれが狼男らしいと女子から熱い視線を集めていた。
「あ!ほら、いたいた!かがみん、アリスちゃん!」
『さつきちゃん!来てくれたの?』
きゃー可愛い!とアリスに抱き着く勢いで教室内に入って来た桃井は、相変わらずのハイテンションで火神はあからさまに嫌そうな顔をした。
「当たり前じゃない!」
『ありがとう!』
キャッキャ手を取り合いはしゃいでいる二人の後ろで他の女子の黄色い声がする。