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君と僕とが主人公LS

第21章 9月 Ⅲ


暑さも和らいできた9月の終わり。
五月蝿かった蝉達の鳴き声もあまり聞こえなくなってきた。
新学期からは黒子の個人練習に付き合い、バスケ部に頻繁に顔を出す様になったアリスは、すっかりマネージャー状態。
カントクが来れない日は、代わりに練習メニューを伝えたり、個々のデータを記録しておく事もやっている。


「変わりましたね、アリスさん。」

「あぁ。なんか楽しそうだな。」


今は2号と一緒に体育館の隅でボール遊びをしている。
体育館でバスケットボールに触る事などなかったアリスが、今はそれを手に、気が付いたらボールハンドリングをしていたりもする。
試合形式で練習をしていれば、目をキラキラと輝かせてその様子を見ている事も多い。
それは何かが吹っ切れた様な、自棄になっている様にも見えた。
今もタンタンとリズミカルにボールをついて足の間を八の字に動かしている。
ボールが彼女の手から離れると2号がそれを追いかけて行った。


「アリスちゃん、ちょっといいかな?」


木吉に声を掛けられ体育館を出て行く。
カントクからももう幾度と無く誘いを受けている、正式入部についての話をされた。


「どうしても嫌だと言うなら無理強いはしたくないんだ。でも、これからの事を考えると君の助けは必要になる。」

『正直、前程は嫌じゃないんです。でも、私は誠凛だけを応援出来ないから。』

「噂は本当なんだね。」


噂って?と首を傾げたアリスに、木吉は気まずそうな顔をした。


「他校生に彼氏がいるんだろ?」


彼氏はいない。
けれど、他校生と関わりがある事は間違いない。しかもほぼ全員がバスケ部員かその関係者。


『彼氏はいません。けど、親しくしている友人が多い事は事実です。だから私はみんなを応援したいんです。だから、すいません。今みたいにお手伝いならします。けど、やっぱりマネージャーにはなれません。』


全力で誠凛の勝利を望んだり、応援したり出来ない自分には、それは相応しくないとアリスは考えている。
それを聞いた木吉は、柔らかな笑み。
大きな手で申し訳ないと俯くアリスの頭を撫でた。


「そんな風に真剣に考えてくれてるだけで十分だ。これからも手伝い、頼むな。」

『はい!』

「それに2号も君にだいぶ懐いているみたいだしな。」
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