第6章 平穏な日々に嵐はやってくる~トド松
<ナス子side>
「ただいマーーーッスル!! みんなぁ! ナス子姉が遊びに来たよ~!!」
「こんにちは~!」
松野家に着くと、十四松がガラッと勢いよく玄関を開けて同時に私も中にお邪魔する。
挨拶をしたものの、家の中からはなんの反応も返ってこない。
「あれ? 返事がないね・・・もしかして留守なのかな?」
自慢じゃないが、私も、そして十四松も声が大きいので、聞こえなかったということはないだろう。
私が首をかしげながら玄関先から廊下を覗きこんだりしていると、十四松が「あ」と短く声を上げた。
「どしたの? 十四ま・・・」
「みんなぁ!! ナス子姉が、とびっきりのカワイ子ちゃんを連れて遊びに来たよぉー!!」
十四松がそう叫びなおすと、途端に家の奥からダダダダダ!というものすごい足音と振動が。
「「「いらっしゃ~~~~~い♪!!!」」」
同じ顔に、同じ表情。
にへらへらと目も口も完全に力が入っていない。
ナニその顔、気持ち悪いんですけど。
私が苦虫を噛み潰したような表情で、目の前に現れた三人の松を睨むと、松達も私と十四松以外の人間がいないことに気づき、その途端に私と同じような表情に崩れた。
「おい十四松っ、とびっきりのカワイ子ちゃんはドコにいんだよっ! お前嘘ついたな?!」
「待つんだおそ松。きっとシャイガールなんだ・・・オレの魅力に驚いて思わず身を隠したんだろう。 恥ずかしがらずに出てきておくれ、ワンダフルビューティーガ~ル?」
「長いしウザイし痛いよカラ松。 で? どう見ても十四松とナス子姉しかいない気がするんだけど・・・」
この兄弟は生まれた順番に発言しなきゃならないとかいう宿命でも負っているの?
「とびっきりのカワイ子ちゃんだよ!!」
そう言うと、十四松は私の胸に抱かれたミケ子に向かってニッコリと笑いかける。