第32章 【R18】危険な香りの温泉旅行 危険すぎる温泉旅行
トントン
という音と共に、部屋のまた向こうの入り口のドアの外から、仲居さんと思われる年配の女性の声がする。
「松野さま、お夕食はいかがだったでしょうか?御済でしたら、御片づけをさせて頂きたいのですが」
一瞬の間の後、ドゴーンという大きな音と共に、部屋の中が揺れた気がして、慌ててドアを再度ノックする。
「松野様?!松野様、どうされました?!」
ガチャリとドアが開き、中から客の中で唯一の女性であるナス子が仲居さんに笑顔を向ける。
「あはははははは!すみません!!弟たち皆お酒飲んでスッカリ酔っ払っちゃって!!介抱してたところだったんですよぉ~!!あっ、片付けですよね!!大丈夫ですお願いします~!!」
ナス子がそう言って二人の仲居さんを中に招くと、閉められた襖の向こうからイビキのような呻き声のような音が数人分聞こえ、ナス子の言った通り酔いつぶれて寝ているのだろうと、気にせず夕食の片づけを始める。
「7人姉弟なんて、今時珍しいですものね、でも姉弟全員で旅行なんて、大変仲がよろしいようで、微笑ましいことです」
「あはははは!!そうですか?!ホントに手がかかる弟達で大変なんですよ~!」
そんな会話をしながら、仲居さんたちは手際よく片づけをこなしていくと、部屋を去って行った。
バタリとドアを閉め内側から施錠をすると、部屋の中へ戻っていき、綺麗に片付いたテーブルの上に新たに用意されたお茶を自分の分だけ淹れて、熱いうちにすする。
一息つき、隣室へと繋がる襖をスッと開けて中を見ると、敷かれた七枚の布団の上に、六人の死体、もとい六つ子が死屍累々と気を失っていた。
仲居さんの声が聞こえた瞬間、カッと目を見開き一瞬で我に返ったナス子が、鬼神の如き凄まじい動きを見せ6人のセクハラ男共を殺、もとい一瞬で仕留めたのである。
遠のく意識の中6人は思った。
ナス子は間違いなく、マウンテンゴリラの血をひいている・・・と。