第23章 *どんな君も*〜赤司征十郎〜
香奈side
それは、いつもの様に登校している時だった。
隣を歩く赤司君が、あたしを見て、
「香奈。」
「ん?」
「髪、伸びたね」
と、あたしの頭を撫でてきた。
誰もいないけど、恥ずかしい。
真っ赤な顔のまま、
「やめてよ、撫でるの…。」
と、赤司君の手を頭から離してしまった。
赤司君は、あたしが中一の時から付き合ってる彼氏。
勉強も運動も出来ちゃう彼は、もちろんモテモテで。
「どうしたの?急に、そんな事言って」
「いや…ふと思っただけだよ。僕が初めて見た時は、肩くらいだったから。」
「…覚えてたんだ?」
「ああ。」
確かに、赤司君と出会った頃は、邪魔だからって肩以上は伸ばさなかったな。
変わったのは…赤司君と、出会ってから。
「いつから伸ばしてたんだ?」
「…教えない。」
それが、赤司君の周りにいる可愛い子に妬いたから、なんて、言えないじゃん。
あたしは、背も高くなくて、顔も大人びてなくて、性格も冷たいとか周りに言われて…。
だから、せめて髪だけは、あの子達に近づきたくて。
「そう言われると、余計に気になるな。」
「赤司君が期待してるような理由じゃないし。」
「別に、何か特定の答えを求めているわけじゃない。気になるだけだ。…好きな人の事は、たくさん知っていたいだろう?」
好きな人…か。
赤司君は、あたしのどこが好きになったのかな?
やっぱり、髪が長いところ?
…だよね、他にいいところなんてないもん。
「…変って、思わない?」
「思わないよ。」
「…赤司君の近くにいる子、皆可愛くて、髪も長くて…だから。」
言いたくなかったな。
自分で言っておいて、自分で傷ついた。
「…へぇ…。」
「分かったら、もうこの話は終わりに…」
「それは、僕のためって事か?」