第19章 *至近距離*〜緑間真太郎〜
香奈side
『♪〜♪♪〜』
心地よいピアノの音が、音楽室に響く。
綺麗な音…。
私は最近、趣味でピアノを始めた。
習ってる訳じゃ無いけど、自分の好きな曲を弾くのが楽しい。
音楽室に来たのは今日が初めて。
だけど、家で練習した分まぁまぁ弾けた。
『ガチャッ』
と、不意にドアの開く音が聞こえた。
ピアノを弾く指を止めて見てみると、そこには彼氏の緑間君がいた。
「緑間君!」
「香奈…お前、ピアノ弾けたのか?」
「あー…ちょっとはね。趣味だから、下手だけど。」
「そうか。」
特に興味は無い、というような感じで、こっちに歩いて来る緑間君。
「緑間君は上手だよね。頭も良くて、バスケもできて、ピアノも弾けちゃうなんてすごいなぁ。」
私なんて、ちょっとピアノが弾けるだけで、特別得意な事は無い。
運動も勉強も普通。
だから、いくつも得意なものがある緑間君は羨ましい。
「…ピアノ、教えてやらん事も無いのだよ」
「本当?ありがとっ!」
ピアノが得意になったら、緑間君に近づける気がして嬉しくなった。
緑間君が近くのイスに座る。
「とりあえず、弾いてみろ」
「うん!」
『♪〜♪♪〜♪』
静かな部屋に、ピアノの音が戻ってきた。
「…」
前半は、緑間君はずっと静かだった。
後半、私の苦手なところに差し掛かった時。
「違う。ここは、こう弾くのだよ。」
「ひゃ!?////」
緑間君が後ろに来て、私を後ろから抱きしめるような体制になった。
私の代わりに、緑間君がお手本を見せてくれる。
「あっ…そ、そういう事かぁ…///」
適当に返事をしといたけど、全然分かっていなかった。
近い近い///