第17章 *慰め方法*〜小堀浩志〜
「映画、結構怖くて面白かったっスねー!」
映画館を出て、黄瀬は満面の笑みで言った。
「森山…お前女子の事チラチラ見んなよ…」
「怖がってる彼女に大丈夫ですよって言って食事に誘いたかった…。彼氏いたから無理だったが…」
「な(ら)なおさ(ら)見ちゃ駄目ですよ!!!」
呆れる笠松に、残念そうに肩を落とす森山、相変わらず声の大きさで周りの注目を浴びる早川達が騒ぐけど、俺達はかなり焦っていた。
「ひっ…う…も、やだっ…」
ホラー映画を見てからというものの、香奈がずっと泣いているからだ。
皆も何とか元気付けようとしてるけど、黄瀬が映画の事を口にした途端更に泣いてしまった。
「…黄瀬、映画っつーワードは禁句って言ったよな?」
「ち、違うんスよ!同情されたら、やっぱ自分だけじゃないって心強くなるじゃないっスか!だからそうしようと…」
「逆効果なんだよ馬鹿!後でシバく!」
まさか、ここまで苦手だったなんて思わなかった。
今回は黄瀬がこの事を知らなかったからしょうがないけど、俺は香奈と映画を見に行く時、一度もホラーを見た事がない。
つまり、対処法が分からない。
どうすれば、笑ってくれるのか…
「大丈夫、大丈夫。」
俺は、気休め程度にしかならないかもしれないけど、香奈の頭を優しく撫でた。
「小堀…せんぱ…」
「どうした?」
「これ…安心します。」
そう言って香奈は、ふわっと笑った。
*慰め方法*
彼女を慰める方法。
それは、
きっと俺にしかできない事。