第17章 *慰め方法*〜小堀浩志〜
小堀side
部活も授業もない日、俺達は駅の前である人を待っていた。
「…香奈、来ないな…」
「ったく…電話くらいしとけってんだよ。シバくぞ黄瀬!」
「なんで俺!?」
「お待たせー!皆ごめんねー!」
笠松が黄瀬をシバこうとした時、遠くからパタパタと駆けて来る女子の声が聞こえた。
それは、正真正銘俺達が待っていた香奈だった。
「おせーよ!おかげで森山が女子探し始めちまったじゃねーか!」
「だからって何で俺をシバくんスか!?」
「笠松、何を言っている!女子探しじゃない!可愛い女の子探しだ!」
「も(り)やまさん、そ(れ)同じです!」
香奈が来たにも関わらず、海常バスケ部のレギュラーは騒ぎ始めた。
「わーっ、今日はいつもより楽しそうだね!」
「今日はいつもより疲れそうなんだよ!!」
騒ぐ一同を見て少しズレた事を言う香奈は、俺の彼女。
そして、海常バスケ部のマネージャーだ。
「香奈、その服似合ってるよ。」
「本当ですか!?実は、服選ぶのに時間かかっちゃって…。でも、小堀先輩に褒めてもらえたから、時間かけてよかった!」
「よくねーよ!おい黄瀬!映画始まるの何時だ!」
俺達が今日こうして集まったのは、映画を見に行くため。
この前、黄瀬がモデル仲間に映画のチケットをもらったらしく、それがここにいる人数分あったから、皆で見に行く事になった。
黄瀬が、そのチケットを確認する。
「えーっと…あ、今から20分後っス!」
「馬鹿かぁぁぁ!!!走るぞお前ら!」
爽やかスマイルでギリギリだという事を告げた黄瀬を一発シバいた笠松の合図で、皆が走り始めた。
「香奈。」
「ん?」
俺が香奈に手を差し出すと、香奈は優しく俺の手に触れた。
その手を、俺は包むように握った。
…しばらくして、時間ギリギリで映画館に入れた俺達は、左から笠松、黄瀬、森山、早川、香奈、俺の順で座った。