第3章 伊月*スキ
「イカの運命やいかに⁉︎ キタコレ!」
「あはは……」
うん、面白い。
俊のダジャレは面白いと思うよ。だってあたし、笑いの沸点低いし。
……けどね?
教室で、わざわざ彼女に残ってもらって、二人きりでする事がこれ?
あたしは、目の前でダジャレをこれでもかってほど連発する、伊月俊の彼女。
付き合い始めて一ヶ月。
なのに、あたし達の関係は何も変わっていなかった。
キスもまだ。
そもそも、そういう甘いシチュエーションが滅多にない。
今まで好きだから見逃してきたけど、今日は寝不足で頭が痛くて、うまく笑えなかった。
「……」
「うーん……。ミルクを見るく。キタコレ!」
──ここにないものじゃなくて、あたしを見てよ。
なんて、ダジャレにこんな切なくなるとか、バカみたいだけど。
「スキーが好きー、ダイスが大好きー! 今日は調子いいな……」
──その言葉、あたしに言ってよ。
ずっとずっと思ってた。
「アイスを愛す、キタコレ!」
ねぇ、俊は……
あたしのこと、愛してるの? 愛してないの?
ガタンッ!
俊の声を遮るように、椅子の音が響いた。