第12章 *隠して*〜赤司征十郎〜
赤司side
部活がない、ある日の放課後のこと。
特別どこかに出かける、というわけでもないが、こう土砂降りの雨が朝から続くと、憂鬱な気持ちになる。
しばらくその場で雨の打ちつけられる地面を見つめていたが、帰ろうと思い昇降口へと向かった時。
見慣れた、女子の後ろ姿があった。
そしてその女子は、今まさに雨の中へ傘をささずに飛び出そうとしていた。
「香奈。」
そんな彼女の手を雨に濡れる直前に引くと、
「きゃ!?あ、赤司君…」
一瞬驚いたような顔をして、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
その顔を見て、僕も少し微笑む。
香奈は、高校になってからできた僕の彼女。
誰にでも優しくて、笑顔が似合う女子だ。
僕はそんな彼女の頭を優しく撫でると、
「濡れたら風邪を引くだろう。傘はどうした?」
と、聞いた。
「えへへ、忘れちゃって…」
だから、飛び出そうとしていたのか。
僕は自分の赤い傘を開くと、香奈を引き寄せた。
「わっ!あ、赤司君?」
「もう少し寄れ。濡れたら意味がないだろう。」