第96章 *通話中*〜高尾和成〜
「お、お邪魔します…。」
「緊張しすぎだって!かわいーなぁ!」
抱きつくだけであわあわしちゃう姿は、宮地先輩の前では決して見れない。
このままうちに住めばいいのに。
「…誘拐しちゃおっかな。」
「!?」
「なーんてな!」
冗談だってー、と笑えば、ぷぅと頬を膨らました。
やっべー、超可愛い。
何だその仕草、あざといなこのやろー!
「取り敢えず、俺一人暮らしだから、遠慮なく上がっちゃってー。」
「うん、分かっ…」
『ヴー、ヴー、ヴー…』
突然どこからか振動音が聞こえて、香奈ちゃんがスマホをポケットから出す。
着信のようだった。
「うわ…清志から電話。ごめん、出るね。」
すごく嫌そうな顔をした香奈ちゃん。
いやいや、そんな顔しないであげてよ、仮にも相手は家族でしょ。
「清志?何、今更…。へ?あー、何だそんな事。何とかなるっしょ。…だから、シスコンじゃないならそんな心配しなくても…」
…けど、その通話はなかなか終わらない。
俺も、その長さにさすがに少しイラついていた。
宮地先輩、俺の香奈ちゃんとらないでくださいよ!
せっかくの二人きりタイムなのに…と残念に思ってると、ふと名案が浮かんだ。
俺がニヤリと笑ったことに、未だに香奈ちゃんは気づかない。