第11章 *遠回り言葉*〜木吉鉄平〜
「…う…っ」
「…濡れるぞ。」
「…何で、ここにいるの…
鉄平…」
誰もいない、と思っていた道。
だけど、後ろから傘をさされて、傘の影があたしの上へと落ちた。
「何でって、帰り道一緒じゃないか」
「…そ、だったね…」
鉄平の前だというのにも関わらず、あたしの目からは涙が溢れていた。
「…何かあったのか?」
「…っ鉄、平…あたし…あたしどうしたら優しくなれるの…?」
「…香奈は、優しくない人なんかじゃない。ただ、正直になるのが苦手だけだ。」
あたしはただ、誰にも理解できないような言葉で聞いたのに、
鉄平はあたしの一番欲しかった言葉をくれた。
「お前は一人じゃない。だけど、寂しいなら、俺が傍に居るから。」
「鉄平…あたし…」
鉄平が好き。
どうしてもっと早く気づけなかったんだろう。
それは、距離が近すぎて、鉄平の優しさが当たり前だと思っていたから。
だけどあたし、気づいたよ。
あたしは鉄平が好きで、
鉄平も、あたしが好きだってことに。
*遠回り言葉*
正直になれないあたしを、理解してくれた。
あなたの優しさに、
これからも、甘えていいですか?