第87章 *クッキー*〜桜井良〜
香奈side
私の彼氏、良君は、料理が上手い。
キャラ弁は綺麗で、お菓子は可愛い。
そんなところも好きだけど、でも、いつもいい事ばかりじゃない。
香奈「クッキー美味しそう!さすが良君、料理上手だね!」
桜「そうですか…?////」
ちょっと照れながら笑うその表情も、嬉しそうなその声も、
女子「桜井君って料理上手なんだね!すごーい!」
桜「あ、ありがとうございます!」
他の人に見せてたら、妬いちゃう。
でも良君は優しいし、私の彼氏でいてくれるから、それで十分。
…いいんだよ、それで。
悔しくても、悲しくても、我慢しなきゃ。
分かってるのに…
桜「…香奈さん?」
気づけば私は、その場にいられなくなっていた。
香奈「う…っは、ぁ…」
良君から逃げるように入った空き教室のドアに、背を預ける。
私がもっと優しくて、嫉妬なんてしない人だったらいいのに。
こんな自分は、自分でも大嫌いだ。