第86章 *前日*〜緑間真太郎〜
傷?
手に傷なんてつけた覚えは…
…いや、あるのだよ。
傷ではないが、絆創膏を見て傷だと思ったんだろう。
緑「…ただの火傷だ。気にするな。」
香奈「えっ、火傷⁉何で?」
気にするなと言ったのに何故かと聞かれ、理由の事を考える。
…何と言ったらいいのかが分からない。
緑「昨日料理をした時、少しこうなっただけなのだよ。」
口をついて出たのは、あながち嘘でもないが、重要な事が抜けていた。
香奈「真ちゃん料理したの⁉まぁ、不慣れな事したら怪我もするよね…」
違う。
俺が見たい反応は、そうじゃない。
俺は…
緑「こ、これを香奈にやるために…作ったのだよ////」
香奈「へっ?これ、あたしにくれるの…?」
それ以上言葉には出せず、小さく頷く。
香奈はまた嬉しそうに微笑み、今見てもいい?と聞いてきた。
緑「い、いいのだよ…////」
その中身を見た瞬間、香奈の顔が赤くなるのが見えた。
それと同時に、俺は香奈を抱きしめる。
自分からした事だが、どこかに緊張している自分もいた。
香奈「真ちゃん、これ、チョコ…////で、でも、ホワイトデーは明日だよ…?」
緑「今日は記念日なのだよ、大人しく受け取れ////」
そう言い、抱きしめる力を少し強める。
俺の心臓の音は、香奈に伝わっているのだろうか。
知られてほしくないと思う反面、そうであってほしいとも思った。
*前日*
俺たちにとっては、
今日も明日も、
特別な一日。