第86章 *前日*〜緑間真太郎〜
緑間side
練習が終わり、昇降口を通る。
校門に目をやると、いつもの通り人影があった。
…香奈だ。
香奈は俺に気がつくと、顔を上げ嬉しそうに微笑む。
香奈「真ちゃんっ!練習お疲れ様ー」
その笑顔のまま駆けてきて、抱きつかれた。
緑「…やめろ、香奈。」
こんな会話をどれだけ繰り返しても、香奈がやめないのは知っている。
それに、本当に離れてほしいとは思っていないのだよ。
香奈「真ちゃんに抱きつくと落ち着くー…」
緑「っ…////」
このまま寝てしまうのではないかと思うほどトロンとした目が視界に入った瞬間、俺はすぐに目を逸らした。
香奈「…真ちゃん?」
緑「何でもないのだよ!////」
詮索されないうちに、半ば無理矢理に手を引く。
…が、香奈はその場を動かなかった。
何をしているのだよ…。
香奈の視線を辿ると、俺の手を見ているようだった。
香奈「真ちゃん、この傷どうしたの?」