第84章 *待ち時間*〜高尾和成〜
『ガチャッ』
それからどれくらい経ったか分からない。
けど、私がいた部屋のドアが、突然開いた。
「お待たせー!」
「和成!」
ドアを開けたのは和成だった。
そして、その手には…
「…クッキー?」
美味しそうなチョコチップクッキーの乗った皿が乗せられていた。
市販のかな?と思ってたら、それを和成に渡される。
「…?」
「あれ、まだ分かんない?」
香奈は鈍感だなぁ、と失礼な事を言った後、和成はちょっと照れながら口を開いた。
「ほら…今日、ホワイトデーだろ?これ、さっき美姫ちゃんと作ったやつ。」
「えっ…さっき、これ作ってたの⁉」
「本当は昨日作りたかったんだけどさ、材料が足りなくて。待たせてごめんな。」
優しく頭を撫でられて、それだけで真っ赤になってしまうのが自分でも分かった。
「あ、ありがと…。」
「どーいたしまして!」
「…って、美姫ちゃんに言っといて。」
「ええっ!?俺には!?」
…冗談だけどね。
美姫ちゃんにも感謝してるけど、一番感謝してるのは、和成だよ。
*待ち時間*
ずっと暇だった待ち時間。
でもそれは、
無駄な時間なんかじゃないはず。