第82章 *照れ顔*〜伊月俊〜
…次の日。
「おはよう、香奈。ハッ!陽気におはよう、キタコレ!」
「…俊君。」
「ん?」
小さいノートにペンで何か書いていた俊君は、あたしの言葉に顔をあげた。
それと同時に、あたしは俊君に抱きついて、初めて自分からキスした。
「俊君、ごめん、ごめんね…。」
あたしは、俊君に全部話した。
今まで不安だったこと、だけど、不安になる必要なんてなかったと気づいたこと。
そして、最後にもう一度、ごめんねと、涙ぐみながら言った。
「…香奈、これ。」
「え…?」
あたしが顔をあげると、綺麗にラッピングされた袋が目の前にあった。
「バレンタインのお返し。その…不安にさせて、悪かった。ハッ!ファンが不安!キタコレ!」
こんなにかっこいい彼氏、他にいるわけないのに、あたし、何不安になってたんだろ。
本当、今思えば馬鹿馬鹿しくて。
「ありがと、俊君!」
「っ…!
ハッ!え、笑顔の絵が落ちる!キタコレ!」
きっと今までも、こうやって照れ隠ししてきたのかな。
一瞬見せた赤い顔は、あたしの脳裏に焼き付いて離れなかった。
*照れ顔*
気づかなかっただけで、
きっと今までも、
何度も照れてくれてたんだね。