第10章 *恋の視線*〜森山由孝〜
放課後。
あたしは、練習場所の由孝の家に来ていた。
「お邪魔しまーす」
いつも親はいないみたいで、あたしは適当に荷物を置いて、由孝の座るソファの隣に座った。
「今日は何やるの?」
「ああ、今日は…
キスの練習をさせてくれ。」
…。
「はぁ!?バッカじゃないの!?」
一瞬、信じられなかった。
こいつ今…
キスって言った!?
「だめか?」
「ダメに決まってんでしょ!キスは…っ
本当に、好きな人としなきゃ…だめだよ。」
自分で言ってて傷つくなんて。
あたしも、由孝に負けないくらいバカだね。
「…香奈は、好きな奴がいるのか?」
「…いるよ。」
目の前にね。
「由孝も、いるんでしょ?」
「いるよ。…目の前にね。」
ドキンッと、胸が高鳴った。
あれ?あたし、こんなセリフ…練習の時教えたっけ?
「それ、どうゆう…んんっ!?」
由孝の馬鹿。
何で本当に…
キスしちゃうの?
「香奈。」
「な、何?」
「分かっただろ?俺の気持ち。」
…っ何、それ。
それは…
告白って、受け取っていいの?
「香奈に好きな人がいるのは分かった。
だけど…返事を聞きたい。」
「っ…好きな人なんて…
由孝に決まってんじゃん…。」
*恋の視線*
あなたの恋の視線が、
まさか、
私に向けられてたなんて。