第10章 *恋の視線*〜森山由孝〜
香奈side
始まりは、中学生の時のあの言葉だった。
『香奈!俺には好きな人ができた!今から告白の練習をさせてくれ!』
幼馴染の由孝に言われたこの言葉がきっかけで、あの日からあたしは、色んな練習に付き合わされた。
最初は告白、次はナンパ、可愛い小物の褒め方…
だけど、由孝に彼女ができたことは今まで一度もない。
おかげで、由孝はこの学校の女子のほとんどに『君は運命の人だ!』と言ったらしい。
だけど、あたしはその女子の中に入っていなかった。
あたしは練習でしか、可愛いとか好きだとか運命だとか、言われたことがない。
あたしは、由孝が…好きなのに。
「香奈!今日、練習しよう!」
今日も、また来た。
「…いーよ。」
ちく、とまた胸が痛んだけど、あたし達の関係が壊れるのは嫌だから…いつも通り引き受けた。