第80章 *触れるだけで*〜笠松幸男〜
香奈side
三月、まだちょっと肌寒い道を、彼氏と二人で歩く。
基本は私が一方的に喋ってたけど、ついにネタ切れになり、少しだけ静かになった。
何か話せる事あるかなー、なんて考えてた時、珍しくゆきちゃんから手を繋いでくれる。
手のひらを重ねられて、指を絡められ…
香奈「うわぁぁっ!!////」
笠「は⁉何だよいきなり!」
手を繋ぐのに余程緊張したんだろう。
頬がちょっと赤くなったゆきちゃんが、私の声に驚いていた。
一方私は、ゆきちゃんとは比べ物にならないくらい頬を真っ赤に染め、繋がれた手が震えている。
バレンタインのあの日から、私はゆきちゃんに触れるたび過剰に反応するようになった。
とはいえ、自分から触れるのは大丈夫なのだ。
自分でもちょっと信じられないけど、私は、ゆきちゃんに触れられるのがすごく恥ずかしい。
それはもうこれ以上ないくらいに。
香奈「ごっ、ごめんね!でも、なんか、その…////」
この事は、まだゆきちゃんには打ち明けてない。
3月14日、バレンタインから一ヶ月経った今日まで、ずっと隠し通してきた。
おかげで、ゆきちゃんは私を驚きと心配の入り混じった目で見てる。
笠「どうしたんだよ?笑わねぇから…」
香奈「な、何でもないの!本当に!本当に!」
笠「そうか?…よかった////」
うわぁぁ、よかったって!
よかったって呟いたの聞こえたっ…!
香奈「////」
それからは気まずくて、ただ黙然として歩き続けた。
その後、学校に着いて、クラスが別だからそこで別れた。