第77章 *一ヶ月*〜森山由孝〜 明日叶様リクエスト
…そして放課後、ついに残り十個を切った時。
森「…香奈。」
後ろから森山の声が聞こえて、全身がビクリと反応するのが分かった。
香奈「森山、どしたの…?」
森「まぁ…分かるだろ?」
…うん、本当はどうしたの、なんて聞かなくても分かるよ。
だって、この時が一番楽しみだったから。
…その後、どこに行く、とか付いてきて、とか言われたわけじゃないけど、あたし達はいつも通り一緒に帰っていた。
そして、あたしが一ヶ月前、チョコを渡した場所に差し掛かる。
あの時の事を思い出し、またドキンとした。
その事ばかり考えていて、いきなり止まった森山に気づかず、その背中にぶつかる。
森「…香奈。」
香奈「っ…////」
何でだろう。
森山の方が緊張するはずなのに、あたしまでバレンタインの時みたいに緊張してる。
森「これ、バレンタインの時のお返し。」
何よ、残念なイケメンのくせにさ。
そんな顔したら…もう本当、ただかっこいいだけになるじゃん。
いつもの森山を忘れるくらいのその違いに、ドキドキしつつ違和感を覚えた。
女子慣れしてるはずの森山の動きが、不自然だからかもしれない。
若干震えてる気がするのは、気のせいじゃないだろう。
森「香奈。俺は、お前が…
好きだ。」
すごい緊張してるはずなのに、どこか余裕そうな森山。
いや…余裕そうに見せてるだけだと思う。
でも、それがあたしにだけ見せる反応だと思うと、嬉しくてしょうがなかった。
香奈「…あたしだって、誰より好きだよ。」
だから、あたしにしか見せない森山を、もっと見せてほしい。
初めてのキスの後の表情も…きっと、その一つだろう。
*一ヶ月*
一ヶ月前の約束。
きっとそれは、
こうなる事も、既に約束されていたんだ。