第75章 *手作り*〜葉山小太郎〜 request*
見事に片言になったけど、これで伝わったと思う。
こんなに緊張した事はない。
それくらい、本気だった。
「え…////こ、これ、小太郎が作ったの?」
「や、玲央姉に手伝ってもらったんだけど…」
あれ、返事は…?
一瞬顔が赤くなったのは分かったけど、またいつも通りの冷静な表情に戻っていた。
いや、正確には、冷静を取り繕っていた。
だって、ちょっと声が上ずっていたから。
「…が、いい…」
「へ?」
「だから…小太郎のがいいっつってんの!////」
…まさか、返事の前に、こんな事を言われるなんて。
意外すぎて、しばらく呆然としていた。
だけど少しして、あのツンデレな遠野ちゃんがデレたんだ、と気づいた。
超嬉しい。
「俺の作ったやつもあるけど…少ないよ?」
「いいの、小太郎の作ったのなら…」
クッキーを作るうち楽しくなって作ってみた、俺が一人で作ったクッキー。
自分で食べようと思ってたけど、それで遠野ちゃんがこんな嬉しそうな顔をするなんて思ってもみなかった。
「…あのね、小太郎。」
「ん?」
『好きだよ』
その後、もう言わないから、という遠野ちゃんの言葉を遮って、俺は遠野ちゃんにキスをした。
*手作り*
『小太郎のがいい』
そんな我儘さえ、
俺にとっては、嬉しかった。