第73章 *チョコ、告白、キス*〜笠松幸男〜 request*
「あの…よかったら、これ。」
そんな表情を見ていた視線を、香奈が手に持ってる物に移す。
それは、小さな箱だった。
「その…ほ、ホワイトデーだけど、チョコ!」
「お、俺に…?」
恐る恐る聞けば、香奈は頷いてくれる。
チョコなんて、バレンタインの時でももらった事ない…というか受け取れないのに、ホワイトデーで逆チョコをもらうとは思わなかった。
「あ、あのね、上手く出来たか不安なんだけどね…。チョコなんて、作るの久しぶりで…」
不安そうにする香奈の言葉を聞いていながら、俺は箱の中のチョコを一個、食べてみた。
甘くて、でも苦くて、美味しかった。
「…美味い」
「本当!?」
パァァッと一気に明るくなる表情は、これ以上ないくらい俺の顔を赤くさせる。
緊張させられっぱなしで悔しかったから、チョコをもう一個口に入れて、
「よかっ…んっ」
そのままキスをして、チョコを香奈の口の中に入れた。
「っ…あ、甘い…ね…。」
「…ん。」
さっき口に入れてたチョコの味は、香奈とのキスの後、さらに甘くなった気がした。
*チョコ、告白、キス*
チョコも、告白も、キスも。
君からのものなら、
全てが甘すぎになってしまう。