第70章 *心配症*〜桜井良〜
桜「…心配だからです。」
一瞬よく分からなくて、へ?と返せば、
桜「あのボールが顔に当たって、怪我していたらどうする気だったんですか?僕がここに戻ってきたのも、香奈さんが一人でいるのが心配だったからです。」
真剣な顔で、そう言われた。
その瞳に捉えられて、桜井君以外見られなくなる。
まるでいつもの桜井君じゃないみたい、なんて思ってたのもつかの間。
桜「っ…余計なお世話ですよね。スイマセン…」
香奈「へっ!?そ、そんな事ないよ!心配してくれて、嬉しかったし…」
桜井君が、またいつものように謝り始めた。
その言葉に素直な言葉で返し、それにね、と付け足す。
香奈「何か…特別、みたいで…」
自分で言っておいて赤くなった顔を手で隠し、隙間から小さく桜井を見つめた。
我ながらバカな事言ったな、と後悔する。
けど、桜井君は微笑んで、
桜「特別ですよ?香奈さんの事は、誰より大事です。」
と言ってくれた。
迷惑だったらスイマセン、なんて言ってたけど、そんな気持ちは全然なかった。
ねえ、それは…期待してもいいの?
あたしだって、桜井君の事好きで、特別で、誰より大事なんだよ…?
香奈「あ、あたし…」
好きって言いたい。
だけど、言えなかった。
桜井君に口を塞がれて、ゆっくり離れる。
桜「香奈さん、僕、香奈さんが好きです。」
香奈「…あたしも、大好き…!」
その言葉が嬉しくて、あたし達は、もう一度キスをした。
*心配症*
小さな事でも心配して、
でも、それはやっぱり、
あなたが好きな人だから。