第70章 *心配症*〜桜井良〜
香奈side
香奈「ごめんね…」
桜「許しません。」
いつもからは想像出来ないけど、今桜井君は怒ってる。
それは…当たり前って言ったら、当たり前なんだけど。
事の始まりは、数分前。
いつもはさつきちゃんと二人でやっていた、マネージャーの仕事。
今日はさつきちゃんは用事があるらしく、それらをあたしは一人でやっていた。
『ごめん!本当ごめんね!』って、何度も謝ってたっけ。
この時は、桜井君みたい、なんて呑気な事を考えていた。
そこまでは、よかったんだ。
その仕事をしてるうち、ある事をしてみたくなるまでは。
桜井君の得意技…3Pシュート。
『ちょっとならいいよね』という気持ちが間違いだった。
ゴールと真っ直ぐに向き合って打ってみても、なかなか出来ない。
そしてちょうど五回目、リングにボールが当たり、跳ね返って来たのだ。
頭に当たる…と思い、目を閉じた時。
『うっ』
と後ろから声が聞こえ、見てみれば…
あたしが真似してた張本人、桜井君が、跳ね返ってきたボールを顔面に食らっていた。
…で、今に至る。
香奈「というか桜井君、何でここにいたの?寮に行ったんじゃ…?」
桜「一度帰って、戻ってきたんです。そうしたら、香奈さんがボールに当たりそうになってたので…」
え…?
それって、助けてくれたの?
香奈「あ、ありがと…」
てっきり、たまたま当たったから怒ってるのかと思った。
桜「香奈さん、何で僕が怒ってるのか、分かりますか?」
さっきから疑問に思ってた事だったので、正直に頭を横に振る。
すると、桜井君はあたしに一歩近づいた。
理由なんて特にないけど、あたしもそれに合わせて後ろへ一歩下がる。
それを繰り返すうち、背中は壁に当たり、顔の横に手を付かれたために、あたしは動けなくなった。