第69章 *お仕事*〜笠松幸男〜
笠松side
土曜日、午前のみの部活時間。
香奈がいない部活は、やはり何かが違う気がした。
「笠松、香奈ちゃんの事考えてんだろ?」
「はっ!?適当な事言うなよ!シバくぞ!」
何で簡単に俺の考えてる事当てんだよ…
「もー、先輩正直じゃないッスねー。顔見れば分かるんスよっ☆」
「ウザッ」
「ひどくないッスか!?」
「まぁでも…香奈ちゃんはバイトがあるってんだから、しょうがないだろ。」
そう、香奈がこうして部活を休んでいるのも、土曜日の朝七時から、バイトが入っているかららしい。
だが、問題はそこじゃない。
俺が気になるのは、香奈がどこで働いて、どんな仕事をしているかだ。
一度も聞いた事がない俺にとって、それは今一番と言っていいほど知りたい事だった。
「それより黄瀬、笠松、この後暇か?」
「何もねーけど…。…まさか…」
「そう!そのまさか!これからナンパし「却下ッス!俺も暇ッスけど、ナンパだけは!」
黄瀬が遮ってくれたのが吉と出たらしく、森山はうーん、と納得いかないように悩んでいた。
「…よし、分かった。ナンパはしない。だから二人とも、俺がどうしても行きたい場所に行ってもいいか?」
「ナンパ以外なら何でもいい。」
「俺も、森山先輩のどうしても行きたい所って気になるし、了解ッスよ!」
そんな会話が終わった後、俺は香奈のバイトの事などとうに忘れていた。