第68章 *もっと*〜青峰大輝〜
香奈side
「大輝ー!おは…って、いないか…」
昼休み、大輝の教室に行ってもいないのだって、今では日常になっていた。
しょうがない、屋上行くか…。
大輝のいない教室を後にして、私は屋上に向かった。
『ガチャッ』
「大輝ー、いるー?」
声をかけても、返事なし。
大輝曰く「特等席」のその場所を見れば、予想通り寝転がってる男子の姿があった。
「大輝!遊びに来たよー!」
「あ?って、香奈かよ。」
興味を示すこともなく、また寝転がる大輝。
大輝とは中学の時から付き合ってるけど、今ではほとんどの時間を屋上で過ごしている。
少し前までは、こんな事なかったのに。
「大輝…したい事とか、ないの?」
「したい事?…特にねーよ。」
前までは、バスケって即答してたのに。
中学で才能が開花して、それっきりこんな感じだ。
無関心という言葉がピッタリな態度。
「部活、行かないの?」
「練習したって、俺に勝てる奴なんざいねーよ。」
変わっちゃったなぁ。
私の好きな大輝は、
部活に一生懸命で、
いつも笑顔で、
楽しそうな大輝だったのに。
「大輝…。」
「んだよ、まだなんか用か?」
大輝の背中を抱きしめる。
あれから、大輝は私にも冷たくなった。
抱きしめる事さえ、私からしかしなくなって。
「もう、笑ってくれないの…?」
「楽しくもねーのに、どうやって笑えっつーんだよ。」
辛い。
辛いよ。
大輝が…遠いよ。
一人でどれだけ泣いて、どれだけ期待したか分からない。
それでも君は、私に背を向けたままだった。