第61章 *人間観察*〜黒子テツヤ〜
香奈「黒子、君…?」
黒「いつも思いますが…可愛いですね、キスの後のその顔は。」
何で、キスするの?
いつも?
…最低。
バカ、バカ、バカ。
何でっ…
香奈「っ…ひっ、う…ば、かぁ…」
涙が止まらなかった。
好きだったのに。
今でも…好きなのに。
黒「なぜ、泣いてしまうのですか?
…もしかして、気付いてませんでした?」
香奈「え…?」
涙を零したまま、テツヤを見つめる。
テツヤが小さく笑うのが見えた。
…お願い、そんな笑顔見せないで。
あたしはお姉ちゃんじゃないのに…
黒「…変装、バレバレですよ。
香奈さん?」
香奈「…っ!!////」
今、あたしの名前…呼んだ?
じゃあ、知ってたの?
お姉ちゃんじゃないって事…
…何だ、そういう事だったんだ。
テツヤがキスしたのは、お姉ちゃんじゃなくてあたし。
香奈「よかっ、たぁ…」
はぁぁ、と安堵のため息を吐いて、またテツヤを見る。
香奈「でも…いつから、知ってたの?」
黒「ショッピングモールに着いた時です。香奈さん、笑ったでしょう?その時髪を耳にかけていたから、香奈さんだと分かったんです。」
香奈さんは笑う時そうしますから、と、テツヤは少し自慢げに微笑んだ。
香奈「そんな細かいとこまで…さすが、人間観察が趣味のテツヤだね。」
そんな、ちょっとした癖だけでバレるなんて。
完全に見くびってたなぁ、あたし。
黒「…それもありますが…」
テツヤは、今日初めてあたしを抱きしめながら、
『好きな人は、自然と見てしまうんですよ』
と囁いた。
…ああ、テツヤには嘘は通用しないな。
あたしも、テツヤを抱きしめ返した。
*人間観察*
君には何でもお見通し。
騙す事は出来なかったけど、
君の気持ちが知れたから、それで十分。