第60章 *わがまま*〜木吉鉄平〜
香奈side
香奈「木吉…撫でて…」
木「ん。」
私がお願いすれば、大きな手でふわふわと撫でてくれる木吉。
私の理想の彼氏は、優しくて、いつも笑顔の人だった。
…そして、木吉はまさに私の理想の彼氏そのものだ。
これ以上の事は何も望みません!
だって完璧すぎるもん。
木「香奈は、撫でるといい顔するよなー…」
香奈「撫でる度に言わなくていいってw」
木「あれ、そんなに言ってたか?」
無自覚なのが、木吉らしいな。
そんな天然なところも、最高。
…だけど、もし一つだけ、木吉に直せるところがあるとしたら、
一切甘えてこないところだ。
いつも私ばっかり甘えて、木吉は甘えさせてくれる。
だけど、木吉が甘えたりする事はない。
今一番木吉にしてほしいのは、なでなででも、キスでもデートでもなくて、甘える事。
やっぱり、甘えられてこそのカップルじゃない?
だから…何気なく話題にしてみよう、と思った。
香奈「木吉は、今一番したい事ってある?」
木「んー…ないなぁ…」
ないの!?
ああ、一番厄介なパターンだ…
もはや望む事さえないのか。
木「香奈とこうやって一緒にいて、触れて、話す時間が好きだからなぁ。」
そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね?
うん、そうじゃなくてさ…
香奈「じゃあ、出来ないとしても、望んでる事とかってないの?」
木「ある、けど…言わん。」
香奈「ええっ!?」
せっかくある、って知れたのに。
木「俺のわがままだからな。それに、本当に必要か、って聞かれたら、俺のためにしかならないと思うよ。」
木吉の言葉に、イラッとなった。