第54章 *愛情表現*〜高尾和成〜
高尾side
始まりは、ちょっとした事だった。
俺が部活に遅れそうになって走ってると、
『ドンッ』
「きゃっ!」
偶然、曲がり角でぶつかってしまった。
「うわっ!ごめん、大丈夫!?」
しかも、運悪く相手は女子。
倒れてしまったその子に手を差し出すと、
「わ…あ、あ…ご、ごめ…なさ…////」
上げた顔を真っ赤にして、さらには逃げられたっけ。
そんな彼女が人見知りだと知るのに、それほど時間はかからなかった。
重度の人見知りで、授業以外で話す事は滅多にないらしい。
髪は長いし、顔立ちも整ってるし、結構モテそうな顔してるのにそうならないのは、その性格が原因らしかった。
俺は、少なからず彼女に興味を持った。
でも、人に聞いて分かった事は、名前が遠野 香奈だという事だけ。
やっぱり、直接話した方がいいよな。
あの時のお詫びもできてないし。
だけど、俺から会いに行く前に、またしても偶然会えた。
昼飯を屋上で食べようと思い、屋上のドアを開けた時。
「あ、香奈ちゃん。」
「!!??」
屋上で一人座り込んでる後ろ姿を見て、直感的に香奈ちゃんだと分かった。
ビクッと反応するのを見て、確信する。
「俺も一緒にいい?」
「……////」
「大丈夫だって。隣に座るだけ。ね?」
触ったりすると怖がりそうだから、隣に座って香奈ちゃんを見る。
ちょっと安心したような顔だった。
その表情だけで、ふと、可愛いと思った。
こうやってまともに見るのは初めてだけど、改めて綺麗だと感じる。